2010年12月01日

About this blog novel

こんにちは。本blog Novelの作者、本橋たかこです。

◯内容

このblogは、本橋がサークル「透明度 ~Transparency~」で書いている小説『Lady Troublelove』の番外編的な短編を掲載しています。
本編の一部はこちらで立ち読みができます。
購入等については、上にリンクしたサークルの公式blogを御覧ください。

◯注意事項

・本blogはシリーズ番外編を掲載していきますが、本編を知らない方にも読めるようになっています。
・本blogの小説には、性的な内容を含んだ描写も含まれます。そのような表現がある章には、目次に黒ハートをつけますので、ご了承ください。(当分はR-15指定とします)
・本blogの小説はフィクションですが、時々実在の人物をモデルとした人物も登場します。その場合は、キャラクターが実在の人物とは必ずしも同一人物ではないことをご了承ください。

◯コメントについて

各章のコメントは基本的にクローズいたしますが、短編の完結ごとに解説の記事をアップしますので、そこのコメントをオープンとします。ご感想・ご意見等はそちらにお書き込みください。
posted by 本橋たかこ at 00:00| その他 | 更新情報をチェックする

2010年03月14日

Prologue: greeting from Troublesome(1)

俺の名は神倉仁美。
普段は香港でスタジオミュージシャンをやっている。
ここでは誰も俺を本名じゃ呼ばない。
名前の広東語読みから「ヤン」と呼ぶ。
これは映画『無間道(インファナル・アフェア)』で梁朝偉(トニー・レオン)が演じた主人公と同じ名だ。
それもあって、結構気にいっている。
そして、俺はもう一つ名前を持っている。その名は「Troublesome」だ。

この街に初めて来たのは、香港が中国に返還される1年前の、1996年。
その2年前、就職氷河期をなんとか乗り越えた俺は、大手流通企業の丸和田スーパーに就職した。
希望していた香港での勤務があっさりと実現した時は、なんて自分はラッキーだと思ったよ。

当時の丸和田は、香港を足掛かりにして成長著しかった中国華南地方への出店を積極的に行っており、大学で中国を中心とした東洋経済を学んでいた俺にはまさに願ったりかなったりだった。
バブルが崩壊して冷え切ってしまった日本経済にはもう何も期待できない。中国大陸で新たなビジネスチャンスを開いて、このまま出世街道をひた走ってやる。俺はひよっ子だったけど、そういう野望を胸に抱いていた。だから、自分に回された仕事は必死で取り組み、野望を実現させるためにあらゆることをやってきた。

ところが、香港が中国大陸に返還されてすぐ、本社が倒産した。
もともとの不況での収入減に加え、その年の秋に起こったアジア経済不況の波をもろにかぶったのだ。
当然、香港支社もその影響を受け、街じゅうの全店舗が閉鎖された。
そして、駐在していた全社員はあっさりと切り捨てられた。

俺の輝かしくなるはずのキャリアは、たった3年とちょっとで終了した。
そして、夢から醒めた。
現実なんて、こんなものか。
そう思うと、とたんにやる気を失った。
仲間たちは帰国か転職かを迫られた。
かくいう俺は転職活動をする気力もなく、いったん帰国した後、また再入国した。
そうして、鳥インフルエンザが猛威を振るっていた香港で、しばらくやさぐれていた。
posted by 本橋たかこ at 00:00| 小説 | 更新情報をチェックする

Prologue: greeting from Troublesome(2)

そんな時、俺に声をかけてくれたのが郭文輝(クォック・マンファイ)だった。
香港に来て初めて配属されたのが香港丸和田本店の広報部だったのだが、当時新進気鋭のデザイナー集団として注目されていた彼の会社は丸和田の広告デザインを手がけていた。
日本びいきのファイが手がけるデザインは渋谷のストリート系の影響を受けていたこともあってたちまち評判になり、当時広報部で一番若かった俺とは真っ先に意気投合した。
その付き合いは総務部に異動しても続き、彼が事務所の仲間と一緒にやっていたバンドに参加して、仕事の合間を縫ってギターに没頭していた。通常業務が過酷だったからか、それと同じようにバンド活動にも激しくのめりこんでいた。
でも、それはあくまでも趣味であり、仕事にできるなんて思いも寄らなかった。

ファイの会社に籍を置き、雑事をこなしてバイトのように働きながら、ギターを弾いた。
彼は俺にミュージシャンになることを薦めた。俺はあちこちのオーディションを受けまくり、不合格を繰り返していたが、1999年の夏、なんとか仕事にありつき、ギタリストとしてプロデビューを果たした。
その後はファイの事務所で組んだバンドの一員となり、今はフリーのギタリストとして活動している。

しかし、俺は最初から成功していたわけじゃない。
しばらくはギターだけでも食えず、貧乏な生活が続いた。
そんな時に、俺に声をかけてきたのが、かつての上司、大庭政満だった。
彼は丸和田の倒産後、一時期姿を消していたが、すぐに香港に戻り、人材派遣会社を設立した。
彼と再会した時、俺はすでにギタリストとして一本立ちしていたので、転職を誘われても断ったのだが、どうしても金に困った時には、彼の持ってくる仕事を頼って小遣い稼ぎをしていた。
今こそ収入も安定したものの、こういう形で彼の会社に持ち込まれるちょっとしたトラブルを解決するようになった。
posted by 本橋たかこ at 00:00| 小説 | 更新情報をチェックする

Prologue: greeting from Troublesome(3)

つまり、俺の裏の顔が、このトラブルシューターだ。
といっても、ミュージシャンとの掛け持ちだから、危険な仕事は断っている。
いくら不景気だからとはいえ、やっぱり本業が第一だ。それでもボスは仕事をもってくる時がある。
困った時には引き受けるが、無理やり仕事をねじ込まれる時もある。
それもしょうがないのかもしれない。俺にしかできない仕事というものがあるのだろうから。 

香港で暮らして10年以上がすぎている。
今じゃ永久居民の資格も得ているし、帰国しても仕事にゃ簡単にありつけなさそうだから、当分はここで暮らすことになりそうだ。
それに、長い付き合いになるイギリス華僑の恋人だっている。
未来はどうなるかわからない。
確かに今しか見られないが、俺はここを生きる場所と定めている。

そんなふうにして生きてきた俺だが、数年前から生活と仕事にちょっとした変化が起こった。
それは、俺の義理の妹が香港に留学してきたからなのである。
だが、このことについては別の機会にしよう。
posted by 本橋たかこ at 00:00| 小説 | 更新情報をチェックする
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